慢性疼痛(まんせいとうつう)とは

痛みによる経済損失は1兆9千億円以上

国際疼痛学会(こくさいとうつうがっかい)による慢性疼痛(まんせいとうつう)の定義(2020年)は、「怪我や病気が治るはずの時間が経ってもなおも続く痛み*」で、3ヶ月以上続く痛みと言われています。

*「急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間を超えて持続する痛み」(出典:慢性の痛み情報センター.https://itami-net.or.jp/aboutpain)。

ケアネット(CareNet.com)2018年8月27日の記事によりますと、慢性疼痛の保有率は、成人の22.5%(患者数2,315万人)とされ、男女ともに「腰痛」と「肩こり」が上位を占めているとのことです。

企業や経営者が利益を生むためには従業員の「健康問題」がとても重要となり、治療や療養に直接かかるコスト(医療費)とは別に、間接的なコストとして、病欠による生産性の低下アブセンティーズム、absenteeism=欠勤)と、健康上の問題があっても出勤してしまうことで、遂行能力が低下しているために効率・生産性が低下してしまう状況プレゼンティーズム、presenteeism=居残り)の2つが定義されるそうです。

2018年の調査報告によると、企業における従業員の健康にまつわる費用総額の内訳は、医療/調剤費が25%、アブセンティーズムが11%、そしてプレゼンティーズムが64%であったとのことです(Nagata T, et al. J Occup Environ Med. 2018;60:e273-e280.)。

すなわち、間接的コストであるアブセンティーズムとプレゼンティーズムを足した75%は、痛みの治療にかかる直接的コストの3倍に達するということになりますから、痛みによる生産性の低下が招く経済的損失の方が医療/調剤費よりもはるかに深刻だということです。

また、別の調査報告によると、労働人口の半数が3か月以上続く慢性疼痛を有しており、そのための欠勤日数は年間平均で9.6日、そしてなんと、痛みによる就業への影響から生じる経済損失は、2012年の試算で1兆9,530億円に上ったというのです(Inoue S, et al. PLoS One. 2015;10:e0129262.)。

驚くべき数字ですね。

これらは、マクロな経済的視点からの試算で、ご自身には関係ないと思われた方もいらっしゃると思いますが、本当に無関係と言えるでしょうか?

例えば、痛みがあることで、本当はやりたいことがあるのにそれらを我慢してはいませんか?(したことはありませんか?)

また、職場などで他の人たちが当たり前にできることを、痛みのために躊躇(ちゅうちょ)してしまうことはありませんか?

近年は慢性的な痛みとストレスとの関係がより重要視されてきています。

原因のわからない、長く続く痛みの背景には、その人の置かれている環境の影響や、心の問題などの影響が大きいと言われるようになっているのです。

一方、長く続く痛みは、痛みが続くこと自体がストレスの原因になり、そのことによって痛みが固定化し、ますます治りにくくなるという悪循環に陥りやすいと言われています。

つまり、長く続く痛みと共存していることは、自分で気づいていないだけで実は大きな損をしている可能性が大きいのです。

一般的に、慢性的な痛みが短期間で劇的によくなることは少なく、治療を始めると数週間~数か月経って、少しずつ(薄皮をはがすように)改善していくことが多いのですが、これは痛みが生じてから経過した時間が長ければ長いほど、複数の要因が複雑にからみあって痛みを修飾しているためと考えられています。

もしも、このページを読んでくださっている貴方が、長く続く痛みを放置しており、まだお医者さんにも診てもらっていないのであれば、まずはお医者さんに相談してみてください

多くの場合、お医者さんによる有効な治療法があると思われます。

しかし、お医者さんに相談し、治療を受けたことがあるにもかかわらず、慢性的な痛みが改善しないのであれば、当院に問い合わせてみるという選択肢があります*。

痛みから解放され、以前よりもイキイキとした日々を取り戻すお手伝いができるかも知れません。

痛みのためにあきらめていたことを、あきらめずに済むようになるかも知れません。

お仕事や、その他の日常作業の効率が改善するかもしれません。

*お問い合わせフォームからお願いします

注意1)治療期間には個人差があります。また、痛みがある部位によっても、改善するのに要する期間が異なります。

注意2)いわゆる「加齢による疾患」と呼ばれている、変形性関節症や骨粗しょう症に伴う痛みなどの中には、程度によりはりきゅう治療によって顕著に改善しないものもあります。

注意3)がんに伴う痛みや、進行性の病気、神経因性疼痛などの難治性疼痛疾患は、患者様の主治医と相談し同意を得たうえで治療させていただく必要があります。

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